症例紹介(写真あり)

ここでは当院で治療した症例をご紹介します。
手術中の写真なども出てくるため、苦手な方はご注意ください。

症例紹介

ハムスターの子宮蓄膿症

「お尻周りが何か変」との主訴で夜間緊急来院されました。

お尻周りに血膿が付着し、検査を進めると子宮内に蓄積した膿が陰部から排出されている様子でした。

超音波検査画像:子宮内が腫れあがっている様子

麻酔をかけて卵巣子宮を露出(左子宮が腫れている)

卵巣と子宮を切り離した所:矢印が右子宮、矢頭が左子宮

縫合後:ハムスターは抜糸のいらない方法で縫います

2023年04月18日

犬の脾臓摘出

いつも元気なワンちゃんでしたが、ペットドックを行った際に脾臓に腫瘤が観察され、脾臓摘出手術を実施いたしました。

病理診断結果では「脾臓リンパ性結節性過形成」との診断でした。

超音波検査画像:脾臓の矢印で囲まれた所に腫瘤が認められた

開腹後に脾臓を露出:手前に腫瘤が認められる

脾臓腫瘍:脾臓リンパ性結節性過形成

本疾患は高齢犬によくみられる非腫瘍性病変とされています。脾臓表面の膜から隆起して観察されます。本組織は非常に脆弱な組織であるため、増大に伴い破裂・出血起こすこともある為に注意が必要なものです。

治療

このタイプの腫瘤は切除で良好な経過を得られるために手術による切除が選択肢となります。

2023年03月25日

犬の網膜剥離

かかりつけ医にて右眼:緑内障と診断され、治療していたが眼圧のコントロールが上手く行かないとの主訴で当院に来院されました。

右眼は散瞳がみられ、視覚は消失していたものの眼圧は12-13mmHgと正常でした。眼底検査にて全周にわたる網膜剥離が確認されました。超音波検査でも網膜剥離がみられ、眼球は左眼と比較して、やや拡張傾向(慢性緑内障を疑う)でした。

現在、網膜剥離の手術もありますが、本例は緑内障を発症しており視神経のダメージが既にある事から手術は適応外と評価致しました。

犬の網膜剥離

犬の網膜(光を感じる部位)は後ろの壁(脈絡膜)に接着しているのは一部分だけで、大半は手前の領域にある硝子体(ゼリーの様な成分)によって支えられている状態です。この硝子体が何らかの影響で柔らかくなってしまうと網膜が浮きやすくなってしまいます。

海外の論文ではヘッドシェイキング(おもちゃを持ってブンブン頭を振る)をする犬が統計学上で網膜剥離の発症率が高いとされています。

網膜が剥離してしまうと失明します。また剥離した際に遊離した網膜細胞の影響で、緑内障を起こす可能性もあると言われており、網膜剥離後の緑内障にも注意が必要です。

治療

網膜剥離は現在、手術で治療できる疾患です。しかし特殊な機器が必要な為、専門病院への紹介となります。また発症から手術を行うまでの期間が重要とされており、発症から手術までが2週間以内:77%、1カ月以内:70%、1カ月以上:66%という視覚の回復率と言われています。

その為、本疾患は早期発見・早期治療が重要となります。しかし厄介なのは、片眼のみの網膜剥離は症状として分かりづらい所にあります。犬の場合、片眼の失明が起きても生活に支障があまり出ない為、気付かれる事が少ないのです。その為、両眼の網膜剥離が出て初めて見つかるケースが多く、その際にどちらの眼が手術適応なのか判断するのが大変難しくなります。

気付かれる方は、左右の瞳孔の大きさの違いで気付かれる方が多いので、左右差が診られた際にはすぐに動物病院へ相談する事をお勧めします。

2023年02月28日

犬の脂肪織炎

皮膚の潰瘍を繰り返していて、ステロイド治療に反応があったが止めると再発するとの主訴で当院に来院されました。

当院にてまずは感染症に伴うものを疑い、細菌培養検査による菌の同定を行いましたが、検出されませんでした。抗生剤治療中も潰瘍部は不安定で、他の部分に皮下腫瘤も出来始めた為、病変部の切除および病理検査を実施しました。

病理の結果「化膿性肉芽腫性脂肪織炎」という結果でした。

皮膚病変:左腰領域の皮膚に潰瘍および皮下腫瘤が観察されます

消毒後の病変:背側面から撮影

腫瘍の可能性も考慮し、病変を拡大切除しました

縫合して終了

犬の無菌性結節性脂肪織炎

本疾患の発症要因は不明とされていますが、免疫介在性疾患の一つとされています。体幹を主体に多数の皮下結節を形成し、病後期には自壊を伴う事もあります。ミニチュア・ダックスフンドに好発傾向がありますが、他の犬種にも発症はみられます。

本例は無菌性結節性脂肪織炎が慢性化し、排膿および肉芽形成を起こしていた為、上記のような診断になりました。

治療

免疫に関わる疾患の為、治療の主体はステロイド治療および免疫抑制薬による治療となります。両治療を並行して行い、最終的にステロイドを漸減・終了し再発しないか経過をみていきます。

2023年02月03日

猫の後肢断脚

保護猫の後肢にコードが絡まっていて、解除したが色が悪いとの主訴で当院に来院されました。

左後肢の足先には冷感がみられ、肉球の色も暗色化しており、血流および酸素不足の状態が観察されました。抗生剤および抗炎症治療を行いましたが、コードが巻き付いていた部分から皮膚がはがれ落ちてきてしまったので、断脚手術を行いました。

今回の断脚手術は患者の年齢も若かったため(生後3か月程)大腿骨部分での切除を行い、手術時間の短縮を優先致しました。

左側の肉球の色が黒ずんでいるのがわかります。

足を洗浄後、大腿部(太もも)を1周皮膚切開して行きます

大腿骨周囲の筋肉・神経を切断します

大腿骨を切断し、断端を滑らかにして縫合していきます

筋肉・皮下組織・皮膚を縫合して終了です

2023年01月25日
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