犬の網膜剥離
かかりつけ医にて右眼:緑内障と診断され、治療していたが眼圧のコントロールが上手く行かないとの主訴で当院に来院されました。
右眼は散瞳がみられ、視覚は消失していたものの眼圧は12-13mmHgと正常でした。眼底検査にて全周にわたる網膜剥離が確認されました。超音波検査でも網膜剥離がみられ、眼球は左眼と比較して、やや拡張傾向(慢性緑内障を疑う)でした。
現在、網膜剥離の手術もありますが、本例は緑内障を発症しており視神経のダメージが既にある事から手術は適応外と評価致しました。
犬の網膜剥離
犬の網膜(光を感じる部位)は後ろの壁(脈絡膜)に接着しているのは一部分だけで、大半は手前の領域にある硝子体(ゼリーの様な成分)によって支えられている状態です。この硝子体が何らかの影響で柔らかくなってしまうと網膜が浮きやすくなってしまいます。
海外の論文ではヘッドシェイキング(おもちゃを持ってブンブン頭を振る)をする犬が統計学上で網膜剥離の発症率が高いとされています。
網膜が剥離してしまうと失明します。また剥離した際に遊離した網膜細胞の影響で、緑内障を起こす可能性もあると言われており、網膜剥離後の緑内障にも注意が必要です。
治療
網膜剥離は現在、手術で治療できる疾患です。しかし特殊な機器が必要な為、専門病院への紹介となります。また発症から手術を行うまでの期間が重要とされており、発症から手術までが2週間以内:77%、1カ月以内:70%、1カ月以上:66%という視覚の回復率と言われています。
その為、本疾患は早期発見・早期治療が重要となります。しかし厄介なのは、片眼のみの網膜剥離は症状として分かりづらい所にあります。犬の場合、片眼の失明が起きても生活に支障があまり出ない為、気付かれる事が少ないのです。その為、両眼の網膜剥離が出て初めて見つかるケースが多く、その際にどちらの眼が手術適応なのか判断するのが大変難しくなります。
気付かれる方は、左右の瞳孔の大きさの違いで気付かれる方が多いので、左右差が診られた際にはすぐに動物病院へ相談する事をお勧めします。