右眼のチェリーアイ(瞬膜腺脱出)と手術してもらったが再発して治らないとの主訴で当院に来院されました。
右眼に瞬膜腺の脱出と両眼の下眼瞼外側に眼瞼内反が認められました。
先ずは用手による瞬膜腺脱出整復処置を行いましたが、翌日には再発してしまった為、手術にて瞬膜腺の整復と眼瞼内反矯正手術(ホッツセルサス法)を行いました。
本例は瞬膜と眼瞼結膜(瞼裏)の癒着が強かったため、瞬膜が外側に引っ張られて脱出していました。
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右眼前眼部
目頭にチェリーアイと下眼瞼外側に毛が逆立つほど瞼が内反している
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左眼前眼部
右眼同様下眼瞼外側が内反している
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右拡大
内反に伴う皮膚の接触で角膜に血管が伸びている
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左拡大
右眼同様に角膜炎がみられている
塗った部分を切除します
縫合して内反した瞼を外反させる力で整復します
猫のチェリーアイ
猫のチェリーアイは比較的稀な疾患ではあります。0-6歳までの比較的若い年齢からみられるとされいます。原因としては、瞬膜軟骨の変形によるものや経験的に本例のような瞼球癒着に伴うものもよく見られます。
治療
最初は用手による整復(瞬膜の外反をピンセットなどで戻す処置)を試み、整復後にステロイド点眼による抗炎症治療などで瞬膜腺の腫れなどを抑えつつ再発がないかを診て行きます。
用手による整復が上手くいかない、またはすぐに再発する場合は、外科手術を考慮します。
手術方法はポケット法(埋没法:瞬膜腺を埋め込むように縫う方法)による整復で、本例はこの治療により再発なく、治癒しました。また一昔前は瞬膜腺を切除する方法もありましたが、将来的に乾燥性角結膜炎の発症がみられるため、今は禁忌となっています。
猫の眼瞼内反
猫の眼瞼内反は上下眼瞼が眼球側に内反する事で角膜に障害・不快感が生じる疾患です。原因としては、持続的な眼瞼痙攣(眼不快感によるしょぼつき)によって起こるとされています。経験として本例のように瞼球癒着を伴う症例に多々遭遇するため、瞼球癒着との関連性もあると考えています。
治療
治療は外科手術による眼瞼内反の整復手術です。良く選択されるのはホッツセルサス法という内反が起きている周辺皮膚を切除・縫合する事で内反を外反側へ引っ張るという手術です。1度でキレイに整復できない事もある為、何回か手術を行う事もあります。