他院にて見えづらくなってきた・時折物にぶつかる様子があるという主訴で来院され、その後当院に紹介来院されました。
両眼共に瞳が大きく(散瞳傾向)が観察され、視覚の評価では明るい所での歩行検査で異常はみられなかったものの、暗所での歩行時には障害物や壁にぶつかりながら歩く様子がみられました。
眼底検査(光を感じる網膜などの検査)にて、タペタム領域の光反射性亢進・ノンタペタム領域の色素脱・網膜血管の狭小化が観察され、網膜変性(網膜の障害)を認めました。
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右前眼部
瞳孔が拡がっている
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左前眼部
右と同様に散瞳傾向にみられる
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右眼底検査
タペタム領域(黄色の部分)のギラギラが強くみられる
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左眼底検査
視神経乳頭(白い三角部分)から伸びる血管が細くなっている
犬の進行性網膜萎縮
本疾患は遺伝性の疾患で、数カ月から数年かけて徐々に視覚が低下してくる病気です。眼底の異常などは若齢期(3-5歳くらい)から見られますが、日々の検査で気付かれることは少なく、中年齢あたりから症状が見られ始めるため、発見が遅れてしまいます。
初期症状としては、夜盲(暗闇での視覚障害)がみられます。さらには本疾患が白内障を誘発するため、白内障の治療も必要となる事もあります。
治療
本疾患は遺伝性の疾患の為、有効な治療法はありません。進行抑制を期待して抗酸化サプリメントの投与と白内障の評価を含めた定期チェックをお勧めしております。