犬の頸部椎間板ヘルニア

立てなくなってしまったとの主訴で来院された患者さんで、MRIの結果「頸椎3-4椎間板ヘルニア」と診断されました。

ベントラルスロット法による椎間板逸脱物の除去手術を行いました。

MRI画像:矢印の部分で椎間板の逸脱(ヘルニア)が観察されます

術野の消毒後の様子です。首の腹側からアプローチしていきます

皮膚切開および胸骨舌骨筋を剥離して気管が露出しています

気管などの臓器を除けて、椎体の腹側を削っていきます

頸椎模型:オレンジ丸部分を削っています

椎間板逸脱物除去後:穴の奥に圧迫が解除された神経が見えます

縫合して終了です

頸部椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアはミニチュア・ダックスフンドのような軟骨異栄養犬種において好発するとされていますが、どの犬種にも起こりうる疾患です。

逸脱の仕方によってHansenⅠ型(椎間板中心部にある髄核が逸脱する)とHansenⅡ型(髄核を取り囲む線維輪の突出)に分類されます。

症状の程度によってグレード分類もされています。
・グレードⅠ:病変部の痛みのみ
・グレードⅡ:起立歩行が可能なものの、不全麻痺がみられる
・グレードⅢ:起立困難で横臥状態

治療

グレードⅠに関してはケージレスト(絶対安静)および疼痛管理で見ていく事が多いです。しかし治療への反応が乏しいものや再発を繰り返す場合は外科的治療を考慮します。

グレードⅡ・Ⅲに関しては積極的な外科的治療(上記のようなベントラルスロットなど)を行います。

手術によって早期に症状の改善がみられる症例もいれば、数カ月かけて徐々に改善していく症例もいます。術後にはマッサージや屈曲運動などのリハビリを積極的に行う事で症状の改善を促すことも出来ます。

2022年02月08日