犬の緑内障

1週間前から右眼の疼痛がみられ、かかりつけ医から紹介があった症例です。

来院時、右眼の疼痛は観察されなかったものの、眼圧上昇(58mmHg)がみられ、超音波検査にて明かな眼球拡張を認めました(右眼:19.4mm 左眼:17.4mm)。右眼は視覚が観察されず、失明している状態でした。

右眼の慢性緑内障として眼圧降下の点眼を処方して様子を見ていく事としました。

右眼の明かな眼球拡張

犬の緑内障

眼の中には眼房水と言われる液体が満たされており、虹彩(瞳の大きさを変える茶色い膜)の裏側から放出され、角膜(一番表の黒目)と虹彩の間にある隅角と言われる排水口から流れ出て行きます。

この隅角が何かしらの要因(遺伝・炎症・腫瘍など様々・・・)によって排出量が減ってしまう事で、眼内に水が貯まり眼内圧が上昇してしまいます。
 すると眼球奥にある視神経乳頭という神経の入り口が圧迫され、神経障害を示し視覚喪失に繋がってしまいます。

眼圧上昇から24-72時間で視覚喪失に至ると言われているくらい、とても緊急性の高い病気なのです(実際は眼圧上昇から数時間で視覚喪失に至った子も経験している)。
 「眼を痛がっているなぁ・・・明日病院で診てもらおう」と考えて翌日に診てもらうと、もう見えなくなっている事もあります。
 そのくらい怖い病気なのです。

治療

 急性の眼圧上昇に対しては眼圧を下げる点眼を滴下して、早急に眼圧が下がるか細かく眼圧をチェックします。
 それでも眼圧が下がらない場合は、角膜に針を穿刺して強制的に眼房水を抜くこともあります。

視覚の維持が可能であれば、眼房水を眼外に流出させるシャント手術を選択する事もあります。しかし根治治療ではないため、地道な治療が必要になります。

視覚喪失してしまった子に関しては、不快感を呈さない様に緑内障の点眼液で眼圧のコントロールを試みます。もし維持が難しく、眼球拡張の進行や不快感が出てしまう場合は眼内シリコンボール挿入術(動物の義眼手術)を選択する事もあります

2021年04月03日