犬の角膜内皮変性

数カ月前から黒目が少しづつ白く濁ってきている様に見えるとの主訴で来院されました。

右眼の角膜耳側に混濁が観察されました。角膜の混濁以外に明かな異常所見は認めませんでした。

犬の角膜内皮変性

犬の角膜は表面から大きく分けると角膜上皮・角膜実質・角膜内皮と3層からなります(細かく分類するともっとあります)。
 このうちの角膜内皮細胞は角膜を内張りして眼内の眼房水と直接接触する部分となります。
 角膜内皮細胞は角膜の透明性を維持するために水分量が80±2%になるように、眼房水から入り込んでくる水分量を調節しています。

この角膜内皮細胞が年齢・眼内の炎症などの影響で細胞数が減少する事で、水分調節が上手くいかなくなり、角膜の浮腫(むくみ)が見られるようになります。
 白濁自体に不快感はみられませんが、経験的に白濁部位は傷つきやすく・治りづらい印象があり、傷による不快感や感染を伴うと重症化し角膜穿孔に至る事もあります。

治療

角膜内皮変性の効果的な治療はありません。
・塩分濃度を濃くした眼軟膏で角膜の水分を吸い上げる
・角膜の表層切除および結膜フラップ(フードフラップ)を行う事で角膜水分を血管から吸い上げる
・角膜を焼烙し、角膜の水分吸収を抑える方法
 上記のような治療法もありますが、焼くことによる白濁や更なる内皮細胞数の減少により白濁再発などがみられ、根本的な治療は難しいとされます。
 医学では角膜内皮細胞移植や角膜全層移植などの治療がありますが、獣医領域では角膜ドナーなどはない為に現実的な治療法ではありません。

当院では角膜潰瘍に伴う不快感を予防する為に、ヒアルロン酸ナトリウム点眼による角膜表面保護を提案させて頂いております。
 それでも角膜潰瘍が出てしまった際には抗菌剤点眼などを使用して、適宜治療していきます。

 

2021年05月20日