ネコヘルペスウイルス性角膜炎

右眼の傷が数カ月治らないという主訴でかかりつけ医から紹介来院されました。

来院時、右眼には疼痛が観察され、角膜の広範囲に淡い混濁を認めました。傷を観察する為のフルオレセイン染色検査では、角膜の広範囲に染色がみられました。

角膜潰瘍は表層性角膜潰瘍(角膜上皮びらん)と評価し、傷の修復を遅延させる物理的要因(睫毛異常・眼瞼腫瘤など)などが無い事から、ヘルペスウイルス感染に関与する疾患であると評価しました。

ウイルス治療を開始し、途中で浮遊した角膜上皮を剥がす処置を行い、角膜潰瘍は完治しました。

ネコヘルペスウイルス性角膜炎

ヘルペスウイルスは感染を起こすと三叉神経節に潜伏感染し、免疫力の低下時やステロイドの使用などによって結膜炎や角膜炎などを引き起こします。

三叉神経は角膜上皮下に分布しており、ヘルペスウイルスによって神経向性に潰瘍を起こします。その為、最初の角膜潰瘍は樹枝状潰瘍と言われ、枝のような筋状の潰瘍を示します。さらに潰瘍が広範囲に広がっていきます(地図状潰瘍)。

本疾患は慢性化・遷延化しやすく治療には時間を要します。また、慢性化した潰瘍は角膜実質内に血管新生を伴い、実質性角膜炎を引き起こします。

治療

抗ヘルペスウイルス治療がメインとなります。当院の抗ウイルス薬には点眼(イドクスウリジン点眼)と内服(ファムシクロビル)があり、状況に合わせて選択しています。

成書にはインターフェロン治療やL-リジン治療などの方法も記載されていますが、当院では上記の2つを良く使用します。

 

2021年12月05日